よみことばvol.1「春と修羅」
Rendimento×ノラクラフト よみことばvol.1
第一弾は、宮沢賢治 作「春と修羅」です。
■「よみことば」とは?
「かきことば」を、俳優の身体を通して読み上げた際に生まれた、リズムや音の響きのこと。さまざな俳優とコラボレーションするなかで、「よみことば」の魅力に迫ります。
【Rendimento】
「はなす、つたえる」をコンセプトに活動する映像制作チーム。YouTubeにて、日本文学作品の朗読を不定期配信中。ノラクラフトvol.3「その夜は身に染みたか」では、映像プランを担当。
■詩集「春と修羅」(第一集〜第三週集)とは
宮沢賢治唯一の生前刊行詩集。
1924 年(大正13) 4 月刊。「わたくしといふ現象は/仮定された有機交流電燈の/ひとつの青い照明です」と始まる「心象スケッチ」の手法を語る重要な序詩のほか 64 編が、発想または第一稿の日付順に収められています。今回扱う「春と修羅」は、第一集の中の代表的な一遍。
■朗読にあたって
「『春と修羅』は、朗読されている印象があまりないよね」という話題からスタートした本作。鉱物の名前や化学用語をはじめとした賢治特有の言葉遣いで心象を映し取った詩は、一度聞くだけでその意味合いのすべてを理解するのは難しいかと思います。
また、テキストを開けばわかるように、こころの起伏を表すような段組みもかなり印象的なつくり。
まさに「かきことば」としての愉しみがぎゅっと詰まった作品になっています。
そんな一編を本朗読企画の第一弾に選んだ理由は、
言葉たちを口にしたときのリズムのよさと、現代に通づる「悲しみ/怒り」というテーマ性。
とぼとぼと歩きながら展開する賢治の心象風景は、
時に主観的な台詞口調で、あるいはト書き的表現を交えつつの客観的な視点で語られます。
そしてしまいには、美しい自然に読み手自身が同化していくような場面も登場し……。
「おれ(わたし)」という一人称が、テンポよくさまざまな場所に宿っているような感覚に陥る作品になっています。
このように、音で聴いたときの「春と修羅」には、テキストに意味を付け合わせて読むときよりも、はるかにスピーディに展開する映像的面白さが宿っているのです。
また、生きるうえでの歯痒さ・もどかしさ・内なる破壊衝動など…悲しみと苛立ちが交互に立ち現れるようなこころの動きを、洗練された周縁の言葉で言い当ててくるような言葉遣いも、現代を生きる私たちを惹きつけてやまないものがあります。
(これを機に触れてみたという方、どう感じたか、ご感想お待ちしています!)
朗読を通して、自然と「自分」がいつの間にか溶け合い、揺らめくような賢治の詩の世界観を伝えられたらと思います。
まずはその意味を理解しようとするのではなく、言葉の響きや語感に身をゆだねてみてください!
■Rendimento×ノラクラフト よみことばvol.1「春と修羅」
詩は、熱心な仏教徒であった賢治の、正しくあろうとする内省的な心の葛藤から始まります。彼の「悲しみ/怒り」は現代の私たちには少々ストイックな部分を出発点としているかもしれません。ですがこの詩は、現代に生きる私たちが抱える、生きる歯痒さ・もどかしさ・内なる破壊衝動をズバンと周縁の言葉で言い当ててくるような一遍のように、私は感じています。朗読を通して、理想と現実の間で揺れ動く、 ZYPRESSEN(糸杉)の躍動と「おれ(わたし)」=読み手がいつの間にか溶け合っていくような不思議な感覚を伝えられたらと思います。
(テキスト選定・谷口由佳)
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